遺留分の期限に関するQ&A
遺留分の請求には期限があるのですか?
遺留分の請求権は、「相続の開始」と「遺留分の侵害」があったことを知った時から、1年以内に請求をしなければ、時効によって消滅します。
「相続の開始」とは、ご家族が亡くなったことを指します。
「遺留分の侵害」とは、特定の人に多額の生前贈与をしたり、遺言書で特定の人に遺産を渡すことなどにより、自己が最低限もらえるはずだった遺産をもらえなくなったことを指します。
「相続の開始」と、「遺留分の侵害」を知った時から、1年という期限がある以上、1周忌を待ってから請求するということは避けなければなりません。
遺留分の期限は10年だと聞いたことがありますが、本当ですか?
遺留分の期限が10年の場合もあります。
「相続の開始」、つまりご家族が亡くなってから10年が経過すれば、無条件で遺留分の権利は消滅します。
仮に、ご家族が亡くなったことを知らなかった場合や、遺留分の侵害を知らなかった場合であっても、10年間で権利が消滅します。
遺留分の期限の前に、口頭で「遺留分を請求する」と伝えれば問題ありませんか?
後で、裁判になった際、敗訴する可能性があるため、非常にリスクが高いです。
後になって、「遺留分の請求をされたことはない」と主張された場合、期限内に遺留分の請求をしたことを証明する必要があります。
しかし、口頭で伝えただけでは、物的な証拠がないため、期限内に遺留分の請求をしたことを証明することができない可能性があります。
遺留分の請求をした証拠は、どのように残せばいいですか?
内容証明郵便で、遺留分の請求を行うことが一般的です。
内容証明郵便を利用すれば、いつ、どんな内容の書類を送ったかを、証明することができるため、遺留分の請求をした証拠として、非常に強力な証拠になります。
もっとも、相手方が内容証明郵便の受け取り拒否をするようなケースも考えられるため、メールやSNSで遺留分の請求の意思を伝えたり、遺留分を請求することを口頭で伝え、録音するという方法もあります。
しかし、これらのデータは、いつ消えてしまうか分からないことや、偽造の可能性などを主張されることもあるため、内容証明郵便を送ることができるなら、内容証明郵便を利用するべきです。
相手方の住所が分からない場合や、相手方が海外にいる場合は、どうやって、遺留分の請求をすればいいでしょうか?
裁判所に訴訟を提起すれば、期限の問題はクリアできます。
相手方の住所が不明の場合や、相手方が海外にいるようなケースでは、内容証明郵便を送ることができません。
そのようなケースでは、裁判所に訴訟を提起すれば、たとえ相手方に直接遺留分の請求の意思を伝えることができなくても、期限の問題はクリアできます。
ただし、遺留分の期限が過ぎてから、裁判所に訴訟を提起しても、すでに時効になっていることに変わりはないので、注意が必要です。
遺留分の請求はするつもりですが、そもそも遺言が無効だと思っています。1年以内に「遺言が無効だ」という裁判をすれば、遺留分の期限はクリアできますか?
「遺言が無効だ」という裁判をしても、原則として遺留分の請求をし
たことにはならないため、遺留分の期限をクリアすることはできません。
遺言の無効の裁判と、遺留分の裁判は、全く別物の裁判なので、遺言の無効裁判をしても、遺留分の期限を守ることはできません。
特殊な事例では、遺留分の期限を緩やかに解釈した判例がありますが、あくまで例外的なものです。
そのため、遺言無効の裁判をする場合は、遺留分の裁判も同時に行うことが大切です。
遺留分は、一度請求すれば、もう時効になる心配はありませよね?
遺留分を請求した後も、時効には注意が必要です。
民法の改正により、遺留分の権利は、通常の金銭請求と同様、5年で時効になると定められました。
そのため、遺留分の請求した後、長期間何もしないような状態が続けば、本来取得できるはずであった金銭を、取得できなくなる可能性があります。